市場より海に放られ菜種河豚   祐之  (泰三)

 季題は菜種河豚で春。菜種河豚という種類がいるのではなく、菜の花が咲く頃の河豚のことを言う。最も毒性が強いそうだ。

虚子編歳時記には、例句として次の一句のみがあげられている。

捨てられもせずに生簀の菜種河豚  白兔

 さて、この句。市場で獲れた魚を選り分けていると、河豚が混じっている。食べられもしないので、そのまま海へと放り投げる。何ともぞんざいな扱いだが、河豚はそんな風に扱われていそうである。港で働くものたちは、特に感慨もなく、慣れた手つきでぽんぽん海に放るのだろうが、河豚に取ってみれば、とんだ命拾いである。空中に、放り投げられている河豚の形状が頭に浮かび面白い。

 

市場より海に放られ菜種河豚   祐之  (泰三)” に1件のフィードバックがあります

  1. 祐之
    ご紹介に預かり有難うございます。 この欄に紹介されることが夢でした。 詠んだ当初は出鱈目に詠んだつもりですが、時間をおいて雑詠に投句する段になるとそのような情景を見た不思議な気分になった句です。
    返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください