季題は菜種河豚で春。菜種河豚という種類がいるのではなく、菜の花が咲く頃の河豚のことを言う。最も毒性が強いそうだ。
虚子編歳時記には、例句として次の一句のみがあげられている。
捨てられもせずに生簀の菜種河豚 白兔
さて、この句。市場で獲れた魚を選り分けていると、河豚が混じっている。食べられもしないので、そのまま海へと放り投げる。何ともぞんざいな扱いだが、河豚はそんな風に扱われていそうである。港で働くものたちは、特に感慨もなく、慣れた手つきでぽんぽん海に放るのだろうが、河豚に取ってみれば、とんだ命拾いである。空中に、放り投げられている河豚の形状が頭に浮かび面白い。