隕石の飾られてゐる夏座敷 山口照男(2012年7月号)
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季題は「夏座敷」。襖や障子を取り払っていかにも涼しげにしなした座敷である。簡素に設えながらも格式を失わないところに涼味が漂っている。そんな「夏座敷」の床の間に「隕石」が飾られていたというのである。「隕石」は宇宙空間から地上に落下した物体。つまり流れ星の燃え残りの石。おそらく何百年か前にこの村に落下して現在にいたるまで大切に保管されていたものであろう。赤黒いようなゴツゴツしたようなそんな姿も想像される。そんな貴重なものが床の間に飾られている座敷は自ずから、お宮さんとかお寺さん、あるいは村一番の名家の座敷ということになろう。隕石の来歴を色々に聴かされている客人の様子も想像されるが、なによりキチッと掃除の行き届いた「夏座敷」の端正さと「隕石」のこの世ならぬ奇怪な様子のコントラストが一句を面白く際立たせている。(本井英)