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かおる について

 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。千葉県八千代市在住。

土曜吟行会。(前北かおる)

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 今日は土曜吟行会でした。東向島駅に集合して、向島百花園、白鬚神社界隈を吟行しました。百花園では、寒牡丹、臘梅などが盛りでした。参加者は23名、名古屋から近藤作子さんもお見えになりました。

  窓持たぬ路上生活冬ざるる  かおる

第三回黒潮賞・親潮賞を読んで。(前北かおる)

 一月号に第三回黒潮賞・親潮賞が発表されました。黒潮賞は櫻井茂 之さんの「五百余羽」、親潮賞は田島照子さんの「蓑虫」が受賞され ました。おめでとうございます。それぞれの受賞作、および次席、三 席の作品について少しコメントしてみたいと思います。

・「五百余羽」櫻井茂之

 「鷹渡る」とその傍題だけで詠まれた二十句です。季題を一つに絞 った勇気が、この連作を迫力あるものにしています。中でも、

  峰越えて二つ立ちたる鷹柱

は、大きな景を冷静に写生していて、あっぱれと言いたくなります。 そしてもう一つ、

  眩しさの眼底にまで鷹渡る

にも、はっとさせられました。「鷹」を描写した二十句の中に、突然 作者自身が登場するのです。「眩しさの眼底にまで」は少しわかりに くい表現ですが、私は「じっと鷹の渡りに見入っていたため眩しくな って目を閉じた、しかしその閉じた目の奥にまで」と解釈しました。 圧倒されるような光景を目にした興奮が、読者の心を共鳴させます。

 そのほか

  西風にはら(はら)と解け鷹柱

  両翼の羽ばたくはなく鷹柱

  先鋒はあをに紛れて鷹柱

などに心ひかれました。漲る気力が二十句を貫いており、文句なしの 受賞だと思いました。

・「蓑虫」田島照子

 ベテランならではの、無駄のない表現に感心させられました。この 連作には、二つの大きなテーマがあります。前半は「月」。

  夫在あらば何して在らむ月今宵

名月と対するうちに亡き夫君を思い出されたのですが、その思いを「 何して在らむ」と深く掬われました。「もののあはれ」を感じる一句 です。後半は「黙示録」の世界。私にはこの方面の知識がありません が、

  蓑虫の蓑や荒野のヨハネふと

は、わかるような気がしました。「蓑虫や」ではなく「蓑虫の蓑や」 と具体的に言われたことの力かと思います。

 そのほか

  葉鶏頭開基は女人なりしてふ

  更待の月に先立つ星一つ

  こほろぎやゆるびしままの箏の糸

など、一句一句の世界に奥行きがあり、素晴らしいと思いました。こ ちらも文句なしの受賞だったに違いありません。

・黒潮賞応募作から

 次席の梅岡礼子さんの作品は、広島を中心に瀬戸内の景色を詠われ たもののようです。掲載された八句のうちでは、

  雲の峰スコアボードの向うから

の明るさが良いと思いました。

 三席の矢沢六平さんの作品は、夏から初秋の句。

  宿浴衣着てそれぞれに家族なる

幸福な様子を眺めて幸福を感じているのが伝わってきて素敵でした。

 ほかに二十句全て読んでみたいと思った方がお二方。一人は杉原祐 之さんで、お子さんの誕生と成長を詠んだ句が並べられていたようで す。

  嬰児を縦抱きにして御慶かな

には、お子さんの月齢と改まった態度が無理なく表現されています。 もう一人は山内裕子さん。雪の港町を連作にされたもののようです。

  雪中に引込み線の黒く伸び

  町川に溶け残る雪浮いてをり

などドキュメント映像を見るような面白さを感じました。

・親潮賞応募作から

 次席の山本道子さんの作品は、年頭から九月までの作品をまとめら れたもののようです。

  炎帝の御座(ミクラ)となりてミシガン湖

は、「炎帝」という季題を発見されたところがユニークです。

 三席の木内祐子さんの作品は、秋の信州を詠われた連作。

  浅間嶺の紫がかり秋桜

「紫」というのは、日常の景色としてご覧になっている方ならではの 色彩感覚なのでしょう。

 二十句全てを読んでみたい方が、やはりお二人いらっしゃっいまし た。一人は中島富美子さん。

  日曜日なのよいいのよ大朝寝

  夏草は句碑の下五を隠しけり

思い切った表現が面白かったです。もう一人は山口照男さんで、山を 題材にした二十句のようです。

  雲海の怒涛の沖に劔岳

迫力ある表現が魅力的です。

・おわりに

 黒潮賞、親潮賞は二十句と投句数が多いので、ある程度まとまった 内容の方が読みやすいと思いました。そして、その中に際立った一句 、二句があると連作全体に統一感が生まれるようでした。これは、同 様の連作全般にあてはまります。受賞作についてコメントしてみて、 大変勉強になりました。

 黒潮賞、親潮賞も次回で四回目になります。「夏潮」のWebページを うまく使って、一年に一度のビッグイベントを盛り上げていきたいで す。次席、三席の作品掲載などは簡単にできることですし、読者とし ての楽しみも広がると思いました。

池袋句会。(前北かおる)

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 「夏潮」の月例句会、今年のトップバッターは池袋句会です。まだ松の内ということもあり、いつも会場に使わせていただいている豊島区立勤労福祉会館は閑散としていました。不在投句を含めて、参加者は12名でした。

 今日の兼題は「御降」と「橇」。「橇」は余り使われなくなっているので、昔の景を詠むか、特殊な今の景を詠むか、悩ましいところでした。

 2月は新年会があるため、池袋句会はお休みになります。次回は3月7日、兼題は「烏貝」と「菊の苗」です。

  御降や踏み磨かれし御参道  かおる