海風はいつも冷たし花楝 藤永貴之 ほととぎす天山一日(ヒトヒ)雲の中 教育実習生明日から田植手伝ふと 楊梅の樹が境内の真ん中に 御渡りに俄か景気の湖畔かな 矢沢六平 春水に立てば地渋のふるへけり 青木百舌鳥 子烏やけふまだ怖さしらぬ貌 山口照男 紺浴衣屈みて入る屋形船 櫻井茂之
雑詠(2018年6月号)
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海風はいつも冷たし花楝 藤永貴之 ほととぎす天山一日(ヒトヒ)雲の中 教育実習生明日から田植手伝ふと 楊梅の樹が境内の真ん中に 御渡りに俄か景気の湖畔かな 矢沢六平 春水に立てば地渋のふるへけり 青木百舌鳥 子烏やけふまだ怖さしらぬ貌 山口照男 紺浴衣屈みて入る屋形船 櫻井茂之
要塞島 本井英
夜桜のひとゆらぎしてをさまりぬ 根治とは信ずることば花の下 旧上巳冷たき雨の止まぬまま 岬めざす車窓に雨の遅桜 ふる雨に木香薔薇の黄やはらか
タグボート溜まりへ春の雨つめた 野鳩せはしく鶯はのびやかに 鶯の近さや姿見まくほり 我が離れば鶯は嚠喨と 鶯の声やトンネル抜くる間も
砲座跡青木の花はみなこぼれ 島に生ひ島の地獄の釜の蓋 要塞の歩廊ちらちら藤散れる 岬風が空へ放つはつばくらめ 反転の燕すばやく翼閉ぢ
鵜の頚の鉤がつき出し春の潮 干潟より要塞島の崖仰ぐ 春濤へぶちかましては渡船来る 島うらら恙のことも少し聞き チューリップ一弁垂れて蕊まる見え
「筍」 小沢藪柑子 選 親竹のそばをはなれず筍おふ 田中金太郎 円錐の頭もたげて筍おふ 竹の子の未来断ちたる鍬の先 山口照男 京筍紙に包(クル)まれ籠に入り 中島富美子 筍そこここ呉羽山縦走路 本井 英 筍や社宅ぐらしの三十年 田中温子
季題は「雪」。これは降っている「雪」ではなく、降り積もっている「雪」。日本列島の中でも、常にこうした景色に遭遇する地方と、なかなか経験しない地方に大きく分かれる。さらにこの句は、しばらく、何日も同じような「雪景色」を見慣れてしまっているので、まったく「雪」の無かった頃の景色を「忘れてしまった」と嘆いている。
こうなると、やや特殊な、いわゆる「雪国」独特の風土を詠んだ句であることもはっきりしてくる。実際「雪国」に住んだことの無い者にはちょっと想像しにくい感想であるが、よく読んでみると、そんな感覚もあろうかと納得がいった。
この句の魅力はリズム。十二音と五音の語群に分かれていながら、五音(下五)のきっぱりした語調で、全体が引きしまって聞こえる。ふっと口を衝いて出て来た言葉でありながら、「たり」の助動詞が潔い。説明しよう、伝えようという意識より、作者の心の呟きが優先しているためだ。(本井 英)
この雪の下の景色を忘れたり 国分今日古 元日の雨の中なる日章旗 靴で耳つけてトトロの雪だるま 凍道に探れる足の置き所 葉痕に猿面冠者春隣 柳沢木菟 うす闇を得て十薬のここだ咲く 櫻井茂之 桐の花落ちて小さく弾みけり 山口照男 探梅行墓場の裏に出てをりぬ 馬場紘二