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課題句(2024年3月号)

課題句「燕」			青木百舌鳥 選

埋め立てて海は遠くに初燕		小池みち
埋立地にもドッグにも燕来る

つばくろの尾を震はせて餌与ふ		櫻井耕一
とめどなき発車メロディーつばくらめ	前北かおる
ニュータウンオールドタウン燕来る	小沢藪柑子
つばくらめ慕ひ寄らねど逃ぐるなく	本井 英

冬ぬくし博物館のキッチンカー  遠藤真智子

 季題は「冬ぬくし」。「冬暖」の傍題である。立冬が過ぎているのに、まだまだ秋の続きのような日和で、風もないような状況である。「キッチンカー」という車両はいつ頃から、こんなに身近に見かけるようになったのであろうか。小型トラックを改造して、少々の煮炊きなら出来るようになっているらしい。東京のオフィス街などでは働いている人の数と食堂の定員のバランスがとれて居ないためか、若いサラリーマン達が「キッチンカー」で温かいランチを買って、近くの公園などで食べるというのも近年よく見かける景色だ。さてこの句では、その「キッチンカー」が「博物館」のフロントスペースに登場しているのである。

 比較的ゆったりしたスペースにゆったりと建っていることの多い「博物館」。その一画に駐めた「キッチンカー」の前に二三人のお客が並んでいる。なるほど「冬ぬくし」という気分が伝わってくる。たまたま通りかかった作者の目には納得のいく景として見えたのであろう。平凡な景色の中に、季節のゆったりした推移が見えて来る。(本井 英)

雑詠(2024年3月号)

冬ぬくし博物館にキッチンカー		遠藤真智子
十一月の日射し鯨のモニュメント
薄暗きみあかし二灯神の留守
曇天の薄日に傾ぐ石蕗の花

栗を煮る夫ありし日のやうに煮る	牧野伴枝
すつくりと枯れし姿も男郎花		渡邉美保
焼藷にある重心のごときもの		田中 香
瓢の笛音階なさぬ音ばかり		山内繭彦

主宰近詠(2024年3月号)

御慶述ぶ  本井 英

生きてゐることを刻々初明り

着古してヒートテックや今朝の春

からうじて電気喉頭御慶述ぶ

虎御前(トラゴゼ)に西行さんに御慶かな

スマホごし老の御慶を高らかに

猿曳や茶髪ですこし悪さうで

林道のゲートを開き山始

凍鶴を遠くへだてて駐車場

凍鶴を一 時照らす入日かな

枯るるもの同志巻きあひ摑みあひ


著ぶくれて膝だらしなく歩むかな

楷の木の由来謹読著ぶくれて

「仰高」の扁額ゆゆし園は枯れ

枯るる丘の裾をたどりて南武線

寒の日に枝よく光る梨畑

寒の晴明日は姉を見舞はむか

高校生溢るるホーム日脚伸ぶ

庵室に閉門時間日脚伸ぶ

待春の武蔵総社は北面す

川へだて投げ合ふ言葉春近み
◯特殊標記 (1)ルビ 滴りや 山の心斯く (2)詞書

博多二句

(3)添字 干し上げて若布本 ありにけり or 一谷戸の奥の奥まで菖蒲園 or (4)長音等記号 〳〵 〴〵 〱 〲

課題句(2024年2月号)

「紅梅」   足立心一選
段丘に濃きも薄きも梅の紅		武居玲子
青空へ撒き散らすやう濃紅梅

雲厚き日や紅梅の匂ひたる		原 昇平
紅梅やぽちりぽちりと落花置き		本井 英
画室には墨と紅梅匂ふかな		岡﨑裕子
荷を解き湯宿の庭の薄紅梅		江本由紀子