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花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第14回 (平成17年4月8日 席題 花一切・虚子忌)

咲き満ちて風花ほどの落花かな
ちょっとことばがもたもたしているんで、景が結びにくいんですね。もしかすると、「咲き満ちて」が言い過ぎているのかもしれません。ただ、落花が花吹雪のように散るのではなく、ほんの一、二片、上に舞い上がっていく。それを風花のようだという捉え方は、いい感覚だと思いますね。
入学の子らのおはようまちまちに
この句、よく見ていると思います。季題は「入学」です。小学生でしょうね。先生が門の辺りにいて、皆おはようと言うんだろうけれど、小さい声の子や、大きい声の子、立ち止まって声を張り上げる子やいろいろある。それが様々だ。学校へ入って、しばらく教育されれば、皆大きな声で、「おはようございます。」と言うようになるのだろうけれど、入学式ではまだまだ個性が勝っていて、そういう意味では馴れていない感じがよく出ていると思います。
天空を隠してあまる桜かな
いっぱいに桜が咲いて、空が見えないということなんだけれど、それを表現するのに、「天空を隠して」というのは、調子が高くていいと思いますね。「天空」 ということば自体、ひじょうに調子の高いことばで、そう言われてみると、桜が堂々たる、大きな桜なんだろうなということがわかってくるし、格が高いですね。ひじょうにいい句だと思いますよ。
お茶漬けに青ぬたそへて急の客
「急の客」まで言ってしまうと、言い過ぎかもしれませんね。「お茶漬けに青ぬたそへて出しにけり」とか言うと、「急な客でもあったのでしょうか。」というように、こちらの解釈がそこにくるわけね。それを僕に解釈させてくれないのは、ちょっと困ってしまう。でも、気持ちはね。「何にもありませんけれど。」と言いながら、お茶漬けだけかと思うと、ちゃんと一皿青ぬたがついてきた。こんな時間に来てすいませんでした。と言いながらも、そのお客さんに「ほ、ほう。」という気持ちがあるということだろうと思いますね。
にこやかに花の案内の警邏かな
この句は「警邏かな」という、一時代前の時代がかったことばによって、その警察官の年格好、表情、ちょっと白髪混じりで、相変わらず巡査部長とかで、警部とかになれないお巡りさん。そういう感じがよく出ていて、今日あたり、千鳥が淵には、そういうお巡りさんがたくさんおられましたね。