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花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第55回 (平成17年12月9日 席題 火事・枯茨)

類焼をまぬがれし家ひそとあり

「ひそとあり」がいいですね。類焼を免れたんだから、よかったんだけれども、隣近所が燃えてしまって、その家だけ燃えていない。ご近所付き合いもなくなってしまって、燃えなかったんだけれど、気持ちはげっそり疲弊してしまって、 笑い声も聞こえてこない。といったような、火事と言うものの持っている、恐ろしい一面をよく表している句だと思いますね。

山盛を足で抑へて落葉籠

面白いですね。これはいかにも形がね、落葉籠の上に足を載せて抑えている、園丁の姿が、人間の姿がよく見えて、うまい句ですね。

菓子職人(パティシエ)の頬少し痩け十二月

たいへん流行っているお菓子屋さんで、一生懸命働いて、人のいい職人が十二月なんで一生懸命お菓子を作っている。なんか気のせいか、頬がすこし痩けて見えた。というところに、菓子職人への愛情があると思いますね。

粕汁や形見となりし合鹿椀(ごうろくわん)

合鹿椀というものを、よく存じません。ただ粕汁が入るということで、何となく民芸風のものなのかなと思います。粕汁に向いているようなもの、それを形見として、私が今使っている。故人がそれをすすっている時の姿も思い出されたということでしょう。

出荷待つポインセチアの鎮まれり

これ、うまかったですね。ポインセチアの鉢って、一個あると燃え立つようで、派手で、いいなと思うけれど、これはうわーっと並べて出荷を待っていると、逆に一つ一つは鎮まっているような、発散しないような、そんな感じがしてきますね。微妙な気分が伝わってきて、いい句だと思いました。