課題句「汗」 佐藤 聡 選 ぐいぐいと乳呑む赤子汗ばめる 近藤作子 汗ぬぐふ手拭ひ首に駐車番 汗の子の微笑みながら寝返 れる 川瀬しはす 面取れば童顔剣士玉の汗 前田なな 作務僧の額にうつすら光る汗 三上朋子 汗かかずス―としている寺女 深瀬啓舟
課題句(2025年7月号)
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課題句「汗」 佐藤 聡 選 ぐいぐいと乳呑む赤子汗ばめる 近藤作子 汗ぬぐふ手拭ひ首に駐車番 汗の子の微笑みながら寝返 れる 川瀬しはす 面取れば童顔剣士玉の汗 前田なな 作務僧の額にうつすら光る汗 三上朋子 汗かかずス―としている寺女 深瀬啓舟
季題は「枯木」。葉を落として幹と枝ばかりになった樹木である。「裸木」という季題もあるが、こちらにはやや情感が纏わり付く。「モノレール」は「一本」のレールを跨いだり、ぶら下がったりする仕組みの輸送手段。多くは都会でもお洒落な「乗り物」のことを呼ぶが、蜜柑山や山葵田などを縦横に巡って「荷物」を運ぶ軽便な小型運送手段も「モノレール」と呼ぶ。掲出句はおそらく前者であろう。「辷り出す」の措辞は「小型の運搬手段」には相応しくない。木立越しのやや斜め上方に「モノレール駅」が見えるのであろう。地上数メートルの高さに設置された「駅」にモノレールの車両が停車している。発車時間が来て、音も無く発車する「モノレール」。地上数メートルの高さには「枯木」の「幹」と「枝」ばかりである。そんな「縦の線」の密集の中を「辷り出す」近代的な「モノレール」の車体。不思議な調和が感じられる景となった。これも大切な「写生」の「眼」である。(本井 英)
モノレール枯木の中を辷り出す 大山みち子 囀や長き参道ゆつくりと とりどりのスワンボートに春兆す 武家門の日あたるところ福寿草 衰ひの車返しの大桜 児玉和子 春風や池のここより川はじまる 青木百舌鳥 四面体の中に透けたる雛あられ 田中 香 春泥をヨ避けし足跡たどりけり 原 昇平
お海苔ぱりぱり 本井 英 山麓の風大切の飼屋かな 掃立の毛蚕くろぐろと可愛らし 掌に重さとてある蚕かな 鬱勃と村中にあり桑畑 亡き妻が植ゑけん薔薇なほ紅き ねずみ取りなど売り黴の荒物屋 蘖のゆたの緑の銀杏かな 竿先をきゆんと引き込み鱚ならめ 鱚釣に穴子が釣れてひと騒ぎ 大鱚のうす桃色にくねるとき
船頭もときどき鱚の絲垂れて 散り溜まりつつ芍薬のなほ白し 散り尽くしたる芍薬を掃きもせず 龍鱗を這ふ青蔦の途なかば 薄暑また佳し旧邸の公開日 籐椅子をゆつたりと置く畳かな 熊蜂のぶら下がる零れては翔ぶ おむすびのお海苔ぱりぱり雲は夏 軽暖や老いの膚へに心地よく 蘆端正に蒲は屈託なく茂り