課題句「年玉」 青木百舌鳥 選 年玉を両手で受くる子となりぬ 田中 香 歳の順守りて渡すお年玉 お年玉もらひに降りてきたりけり 前北かおる 年玉にはなやぐ時代なつかしく 岩本桂子 いと小さき手にベッドよりお年玉 岡本春子 お年玉遣るも貰ふも目を細め 磯田和子
課題句(2023年1月号)
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課題句「年玉」 青木百舌鳥 選 年玉を両手で受くる子となりぬ 田中 香 歳の順守りて渡すお年玉 お年玉もらひに降りてきたりけり 前北かおる 年玉にはなやぐ時代なつかしく 岩本桂子 いと小さき手にベッドよりお年玉 岡本春子 お年玉遣るも貰ふも目を細め 磯田和子
桃吹きぬ 本井 英 曳波のおもはずあふれ荻の岸 切幣の散らかつてゐる秋の暮 泥煙鯊がたてたり流れけり 鰯雲みしりみしりと目のつまり 愛宕社も伊勢社も柿の里の辻 撮り合つて見せ合つてゐる秋日和 更けつのる夜寒の舞台稽古かな 朝食は七時よりとよ小鳥来る なほ吹かぬ実のありながら桃吹きぬ 棕櫚の実の育ちつつ黄のうすれつつ
ライトアップされて夜寒の天守閣 小鳥来て小鳥去りたり行啓碑 琴の音の止むときのなき菊花展 足元にホースのたうち菊花展 菊花展のテントの奥に何か煮る こまごまと律義に実り男郎花 歩十歩に振り返りたり男郎花 通草生りをると男の声澄めり 暮の秋人少ななる巫女だまり 暮の秋安曇野ちひろ美術館
季題は「富士薊」。多く富士山麓で見かけることから、この名があるという。普通の薊より葉も大きく棘も硬い。一句のキーワードは「健脚組」。勿論客観的な基準がある訳では無く、全体の中で、比較的脚力、その他体力ありとみなされたグループの仮の呼称といったところ。それでも、たとえば二、三十人のグループが一緒に合宿をしようなどという場合には「健脚組」と「足弱組」に分けて、歩くコースなどを分けることが、結果としては無理が無く、良い結果をもたらす場合が多いようだ。ことに俳句の稽古会などというシチュエーションなどを、考えた場合は、比較的若いグループは途中山道や沢道などのあるコースを望むであろうし、反対にやや老いた人々は、なるべく平坦な散歩道が安心で、好まれるであろう。そんなグループ分けをして置いた一行が、あるポイントにさしかかり、「健脚組」と呼ばれる数名が、一行から別れてやや厳しい道に進んで行くというのである。そんな場所に「富士薊」が咲いていたと詠まれると、山中湖畔の「老柳山荘」付近の溶岩道も目に浮かんでくるような気がした。グループ全体の華やいだ気分が伝わってくる。(本井 英)
健脚組ここで別るる富士薊 岩本桂子 菜虫とる雫するほど手の濡れて 屈みたるまま一畝の菜虫とる 見下しにちらと湖見え富士薊 小さき庭つまらなさうにとんぼ去る 湯ざめして人形一つ撃ち落とす 近藤和男 プレス屋の夜食国際色豊か 矢沢六平 大年の没りぎはの日の射しきたり 藤永貴之 形見分け終はりし午後や小鳥来る 都築 華