課題句「枯蔦」 岡部健二 選 廃工場覆ひて蔦の枯れてをり 児玉和子 枯蔦やこの家かつて荒物屋 猫墜ちる壁の枯蔦もろともに 井上 基 枯蔦や連絡つかぬ友のこと 小川美津子 枯蔦の生きてをるとも見えぬかな 本井 英 石垣の蔦の枯れたる歴史館 永 豪敏
課題句(2022年12月号)
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課題句「枯蔦」 岡部健二 選 廃工場覆ひて蔦の枯れてをり 児玉和子 枯蔦やこの家かつて荒物屋 猫墜ちる壁の枯蔦もろともに 井上 基 枯蔦や連絡つかぬ友のこと 小川美津子 枯蔦の生きてをるとも見えぬかな 本井 英 石垣の蔦の枯れたる歴史館 永 豪敏
季題は「沫雪」、「雪」の傍題である。同じく「アワユキ」と発音し「淡雪」と記す場合は「春の雪」の傍題となるが、「沫雪」と表記した場合は、「泡のように溶けやすいやわらかな雪」の謂いとなるばかりで、「春」とは限定しがたい。角川『俳句大歳時記』(2006年版)は「沫雪」を春の「淡雪」に統合させているが賛成しかねる。 「楢枯」はカシノナガキクイムシの媒介する「ナラ菌」によってミズナラ等の樹木が枯損する樹木の伝染病。近年特に流行が大規模で、野山の景を一変させている。
そんな「ナラ枯」の被害にあってすっかり茶色に変色してしまった「楢」の葉に、溶けやすく「あわあわ」した雪が付着し始めた景を詠んだものである。いかにもカラカラに枯れてしまった「枯葉」に「雪」が癒やすようにまつわり始めた景に哀れがある。「沫雪」を春の季題の「淡雪」としてしまうと、一句の「哀れ」の大部分が損なわれてしまう。敢えて「沫雪」を「雪」の傍題とした所以である。(本井 英)
楢枯に沫雪とまりそめにけり 藤永貴之 柿の秋筑紫次郎を南に 子供等のやうや落葉の駆け回る 剪定の了りたる冬紅葉かな 旭光の燃え広がりて冬の雁 前北かおる 秋水の辷りて迅き魚道かな 青木百舌鳥 三日目の干梅の肩ゆるみたる 梅岡礼子 玉と散りカイ塊を連ねて滝落つる 児玉和子
清サンが好きで 本井 英 岬への径初月を見まくほり 富士薊参道にして登山道 掌の窪に転げ墜ちたる菜蟲かな コスモスの数輪風をもてあまし バス停やコスモス坂と命けたる すでにして浮かび出てをり小望月 月の友竹馬なる筒井筒なる 百日紅根岸へ虚子が通ひし道 清サンが好きであつたと獺祭忌 菓子パンも刺身も好きで獺祭忌
身ほとりに南岳画巻獺祭忌 とりとめし命大切獺祭忌 萩叢を遠ざけてをる雨襖 村々の蕎麦の遅速やみすずかる 姫川も海近ければ刈田など 熊鈴につぎつぎ抜かれ草紅葉 青鷺は頸のS字をさらに矯め うすうすと埃の浮かび池の秋 ナラ枯の切株に生ふ菌派手 ふくらはぎぱきぱき曼珠沙華真つ赤