課題句「雨月」 井上 基 選 姨捨の闇の深さや月の雨 岩本桂子 新聞記者参加したるに雨月かな 歌舞伎座のはねて銀座の月の雨 町田 良 不祥事の始末をけふも月の雨 杉原祐之 棋譜並べ探る敗因雨の月 木代爽丘 漆黒や湖の雨月に目をこらし 本井 英
課題句(2022年9月号)
コメントを残す
課題句「雨月」 井上 基 選 姨捨の闇の深さや月の雨 岩本桂子 新聞記者参加したるに雨月かな 歌舞伎座のはねて銀座の月の雨 町田 良 不祥事の始末をけふも月の雨 杉原祐之 棋譜並べ探る敗因雨の月 木代爽丘 漆黒や湖の雨月に目をこらし 本井 英
季題は「棕櫚の花」。まことに特徴のある「花」であるが、また一方、俳句を詠むようになるまでは、なかなか気が付かない「花」でもある。全体、様子の変わった樹木で「毛むくじゃら」の幹などは鐘を撞く撞木ぐらいしか使い道もなさそうだ。そして「花」ははじめグロテスクな黄色い「舌」のように頂きから垂れ下がり、ぼろぼろと粟状の小花を咲かせる。そんな「棕櫚の花」を「どっさりと」と形容した視点はまことに的確で、「量感」「質感」ともに表現しえて「妙」というべきであろう。決して派手な句ではないが、誠実な写生の眼差しが捉えた「ひとつの景色」である。(本井 英)
どつさりと高く黄色く棕櫚の花 原 昌平 祭髪淡路町より乗つて来し 麦の秋埼玉県に広さあり 腥き日本橋川夏夕 風音の中に見つけし小げらかな 前北かおる 病む人の大いにあらひ召されけり 藤永貴之 するすると茶筒に滑りゆく新茶 深谷美智子 カーネーションと松寿司届く日曜日 釜田眞吾
につかにかの 本井 英 ぞわぞわと腰で歩みて毛虫たり 明易の合戦尾根をうち仰ぎ 麻酔より覚めゆく五体明易き 山法師を見下ろさんとて登るかな 向き合うて待つ踏切や梅雨の晴 あれは亀これは鼈梅雨晴間 一病をたづさへくぐる茅の輪かな 滑莧はぐり生産緑地たり 羽毛下の径のほとり代田かな 薫風を棒とつつみて吹き流し
玉網小さし蝶を捕らんや蝦を捕らんや 玄室に幾千年の五月闇 流れゆく蚯蚓の総身ほとびたる につかにかの笑顔にかぶせ夏帽子 きちかうの蕾の闇の覗けけり 膝の蠅ちらりちらりと吾を見上げ 肘で葉を押しやりて蓮撮つてをり 蓮の花つぼむ力をなほ存し 無患子落花霰ほどには弾まざる 夏雲のころがりながら消え失せし