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花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第36回 (平成17年7月8日 席題 川床・金魚)

ひと仕事終えて金魚を眺めけり
これ、面白いですね。室内で仕事をしている方なんでしょう。コンピューターでもいいし、ものを書いてもいいし、なんでもいいですよ。ふっと疲れた目を、今、金魚にやって眺めながら、憩ってをる。この句はリズムにすきがないですね。ことばとことばの繋がりにすきがない。その緊密さが、この句のよろしさだと思います。
風誘ふ乙女の如し沙羅の花
夏椿とも言いますね。白い、わりに華奢な花です。その沙羅の花を見てをったら、まるで乙女のような感じがした。そして風を呼んでいるように思えた。という句で、これで作り方に間違いはないと思います。
出目金の片目となれる哀れさよ
そらー、哀れだわね。出目金てのは、目が勝負で、飼われるのに、なにかの事情で、片目が具合がわるくなってしまったんでしょう。けんかとかではなくて軍鶏とは違うから。水槽なんかで飼っているのは、目をやられる場合が多いですね。料理屋さんの生け簀をよく見ると、鯛なんかでも、目が濁っていたり。なんかの事情で、片目がつぶれてしまった、金魚。それを見るにつけて、かわいそうなことをしたなと思っている。という句です。
坂がりにお茶室までの竹落葉
「坂がりということばを、よく知りませんでしたが、「坂がかり」というふうに解釈させてもらいました。ちょっと高い所にお茶室があるんでしょう。一つではないかもしれませんね。お寺の境内とか、古い建物が真ん中にあって、何カ所かにお茶室が作ってあって、OO宗匠の席、XXの席。一つ、お茶会が終わって、次のお茶席へ移る時に、高みに向かって歩いていった。裾を気にしながら、静かに歩いていったところが、竹落葉が音もなく、くるくるくるくると回転しながら散った。次のお席はどんなお手前なのだろうという期待に、しずかに胸をおどらせててをるという句。なかなか上等な句だと思いました。