花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第27回 (平成17年6月10日 席題 苺・虎が雨)

ひと巡りしたれば閉ぢて未草
之は巧みな句で、俳句のことがよくわかってますね。どっか公園みたいな所で池があって、睡蓮が咲いてたんですね。バラ園があるからって、ぐるっと回ってきた。また入口の池の睡蓮の所に来たら、もう閉じていた。さっき咲いていたわね。もう閉じちゃった。ご承知と思いますが、未草は、未の刻に閉じるので、未草。大体午後二時頃。朝、咲いて、夕方になると閉じるから、未草という別名を持っている。それにちょっと凭れかかり過ぎている危険もなくはないけれど、実景があるから、いいでしょうね。
木下闇抜けて対峙す桜島
まあ磯庭園か何か、そういった所の木立をずっと歩いてきて、木立が繁っていますから、その時には見えないんだけれども、その木下闇を抜けて、汀に来たらば、桜島が向こうにどんとあった。ちょうど自分と桜島が一対一で、対峙しているようだった。
話とてなき老夫婦虎ヶ雨
虎が雨の一つの風情かもしれませんね。虎が雨だなと思いながらも、そのことを夫に告げるでもない。夫も兄弟のことを思いながらも、今更に妻に話もしない。でもお互いに虎が雨だということはわかっているという句だと思います。ただ、この句の場合、語順に研究の余地があるかもしれません。「虎が雨話とてなく老夫婦」。その方が落ち着きがいいかもしれませんね。
虎が雨静かに碓と降りにける
うまい句ですね。虎御前というのは、大変しっかりとした人で、十郎の愛人だったようですが、『碓と』というところに、女の人の強さ、あるいは兄弟を支えた様々の功績、そんなことを考えると、女の涙が静かに碓としているということは、いかにも虎御前という人の大きさが出ていて、うまい句だなと思って、感心しました。
たまゆらの跡を残して蛍飛ぶ
一種の残像現象なんでしょうね。蛍がふーっと飛んでいったのを見たら、その光跡のようなものが、瞬間ちょっと見えた。それを「たまゆらの跡を残して」ときれいに叙したところが、句の格ですね。それがいいと思いました。