芽柳や直線がまた曲線に   藤永貴之(2015年2月号)

 季題は「芽柳」。傍題に「芽ばり柳」、「柳の芽」があり、春の訪れを感じさせてくれる代表的な姿と色である。長い鞭のような柳の枝に、ほつほつと色を兆す柳の芽。幹から上方に伸び始めた「枝」は大きく孤を描いて空中を撓み、今度は地表に向かって「垂れる」、暫く重力に従うように「直線」を描くが、地表近くに至って、微妙に撓んだり曲がったりする。そんな「柳の枝」を目で辿った結果が、この一句である。「直線がまた曲線」という叙し方がまことに周到で、こう言っただけで、「枝」のようす、さらには「動き」までが目に見えるようである。表面すっきり詠まれていて、それでいて読者にさまざまの「形」を空想させてくれる。どこまでも「芽柳」そのものの描写に集中して、ほかの夾雑物に目を向けない態度も立派である。

 このように純粋に季題を凝視し、詠い上げる態度を支えているのは、宇宙を司る「造化」への「拝跪」の姿勢であり、同じく此の世に「生かされ」ているさまざまの「生命」への「尊敬」と「讃美」の心である。(本井 英)