花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第78回 (平成18年4月4日 席題 残花・朝寝)

学帽の少し大きく風光る
「風光る」という季題が気持ちよく付いていると思います。新入生なんでしょう。最初から新入生の頭に合った帽子を被せる親はいません。必ず大きくなるのがわかっているから、本人がいやがらない最大限大きいのを買う。そんな子供の大きな学帽が目に見える。可愛いなと思いますね。
用水の此処に始まる花筏 
どうして始まるのか。ハケの水みたいなのが湧いてくるのか、あるいは農業用水みたいのが地下水道だったのが、そこから表に出てくるのか。そういう流れが滔々と、特に花筏を浮かべている用水というのは、当然これから農業に一番役に立つ季節になっていますから、いよいよ農家の方が忙しくなる頃なんだという背景を持ちながら、花筏が浮かんでいる。用水なので、花筏がけっこう早く流れていくんでしょうね。春を迎えた喜びが、ゆっくり漂っていると思います。
通行証見せて人入る柳の芽
これ、いい句ですね。柳は本当に効いていると思えます。柳なんてどこにでもあるんだけれど、こう言われてみると、都会の風景。柳の植えてある都会。あえて街路樹として柳を植えている都会。その都会のビルに通行証というか、カードのようなものを見せて、人がどんどん入っていく。朝の出勤風景、そういう現代的なものを、くどくどと説明しないで、官庁なんとか省とか、00銀行とか、お掘りの端の柳だろうということがわかってくるだろうと思います。
うぐひすの節回しやゝこなれけり
すこしよくなったねー。うぐいすに対して、頑張れよといった気持ちがよく出てきて、いいなと思いました。
文庫本に栞代はりのクローバー
元の句、「文庫本栞代はりの」なんですが、これも「文庫本に」と字余りになさった方が、栞代はりのクローバーと、ひとまとまりになって、具合がよろしいかと思います。


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