花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第73回 (平成18年3月10日 席題 梅一切・涅槃)

春の土ほっこらと芽を包みをる
「ほっこら」というのがいいですね。擬態語、擬声語というのは、手擦れてくると、つまらなくなってくる。「ほっこら」は、春の土らしい感じがあって、うまいな。「芽を包む」ということも、面白いと思いました。
緞帳の如涅槃図や美術展
これもいいですね。お寺さんの本堂であれば、誰が見たって涅槃図なんだけれども、それをお寺さんの本堂でなくて、美術展ということでお寺さんから借りてきた。タペストリーのようにぶら下げた。なにか明るくて、涅槃図の抹香臭さがすっかりなくなって、美術品の緞帳のようだった。という、いかにも涅槃図が面食らってしまっているなという感じがあって、現代的な俳諧の目だなというふうに思いました。そして表現にそつがないですね。「美術展」ということばで、全部決めてしまっている。
ぽつぽつぽ柳の新芽踊り出る
これはいかにも作者らしい句だなと思いました。「ぽっぽっぽ」というのは、鳩じゃない。さっきの、擬態語、擬声語の話で、柳の芽の一粒一粒が「ぽっぽっぽ」と言ったところが、これはこれで新しいと思って、面白いと思いました。
大番所百人番所梅の花
これは勿論、千代田のお城であることは、ことばからわかる。「大番所」「百人番所」。その千代田のお城も、今は閑散と、広々としている。お侍の姿の無い所に、梅が頃とて咲いてをる。昔もそうだったのかもね。ということで、いかにも千代田のお城の近くに住んでいる人の句だなと思いました。


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