花鳥諷詠ドリル ‐主宰の句評‐ 第43回 (平成17年10月7日 席題 案山子・秋の声)

明月や人の影ある窓一つ

 いいですね。わざわざ明るい月と書いて、「明月」。名のある月というと、いかにも十五夜ということにこだわっ た言い回しになりますが、明るい月というと、十五夜でなくてもいい。十三夜でも十四夜でも、十六夜でもいいんでしょうね。明るい煌々とした月を見て、あ あ、きれいだなと思った。集合住宅かもしれません。灯っている窓がたくさんある中で、ある窓には人影があった。ああ、私と同じように明月を仰いでいるかも しれないと思った。「ここにもひとり月の客」という句ですね。

渓谷を行きて戻りて秋の声

 これ、面白いですね。等々力渓谷って すぐ思ったんですが、つまり渓谷と言っても、川音がざーざーとするのでなくて、地底に籠ってしまったような、下に掘り下がってしまったような、そんな峡 谷。そんなことを感じました。グランドキャニオンだって構わないんですけれどね。ともかくある所まで行って戻ってきた。そんな地の底にもぐったような峡谷 に秋の声が満ち満ちてをった。というのがよくわかる句だなと思います。

傾きて口のへの字の案山子かな

 元の句、「傾きて口をへ の字の」。「口のへの字の」の方が、面白いかもしれません。「口を」だと、理屈が付いてしまう。「口をへの字」というと、案山子が自分で口をへの字に曲げ たという見立が入ってしまう。それに対して、「口のへの字の」というと、案山子が自分の意志でへの字にしているのでなくて、書いた人がへの字に書いている ので、どこまでも無機質にへの字になっているということを言っていることになる。そこが面白いと思う。

水引の花それぞれの雨の粒

 こういう素直な句が、素直に出来るというのが大切なことで、その点を推賞したいと思いますね。

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