「夏潮 第零句集シリーズ 第2巻 Vol.2」宇佐美美紀『日脚伸ぶ』~感性~

 「夏潮第零句集シリーズ」は第2巻第2号は、宇佐美(旧姓:今村)美紀さんの『日脚伸ぶ』。

 

 宇佐美美紀さんは昭和五十年熊本県生まれ。山本道子さんが経営されるレストランでソムリエールとして勤務されている折、「夏潮」が創刊され俳句に興味を持ち始め、湘南吟行会などに参加するようになられた。句集名の『日脚伸ぶ』は、新年会での本井英特選句の

夕方の開店準備日脚伸ぶ 美紀

から取られた模様。

 俳句のキャリアは4年強ということで、これまでの第零句集のメンバーの中でも句歴はぐんと浅いが、「序文」での山本道子さんの言葉通り、「ワインのプロ」「サーヴィスのプロ」としてその洗練された感覚に素直に従った詠みっぷりが新鮮である。思い切ったオノマトペも良いと思う。俳句ずれせず、どんどんご自分の感じられたリズムを表現していってもらいたい。また、破調句などにも挑戦してもらいたい。

 4年のキャリアであっても毎月コンスタントに句を詠まれているので、100句の中でその軌跡が充分確認できた。甘い句やただ事の句も含め、第一句集へ向けてのステップとしての区切りとして、4年強というのもちょうど良いのではないか思った。一区切りを付けて頂き更に新たな句を見せていただきたい。

除雪車の真つ赤な車体雪の駅 美紀

→季題は「除雪車」。この句は一般的には無駄の重なりがある。十七文字しかない俳句で、「除雪車」と「車体」、「除雪車」と「雪の駅」という重なりがある。詠んでいる景色は単純明快。

それでも不思議と惹かれた。中七の「真つ赤」が「真赤」でないことで「赤と白だけの世界」の印象がはっきりし、上記の言葉や季題の重複が気にならなくなった。一文字で俳句の印象ががらりと変る好例。

 

花埃客入る度に舞ひ込みて 美紀

→季題は「花埃」。美紀さんのことを一流レストランの優秀なソムリエールとして活躍されていることを知ると面白みが増す。「花埃」という「艶」よりも「俗」な季題、「客」という突き放した言い方から、自ずとどのような店構えであるかが想像される。桜の季節でお客さんも大変多いのでしょう。結構なことです。

蕾から出づる白玉梅の花

ぐらぐらと風に揺れをる松の芯

夕方の開店準備日脚伸ぶ

もつてりと熟れに熟れをる柿一つ

がつしりと実るトマトの青さかな

薄青く黒く黄色く茸かな

カーテンの激しくうねり大夕立

水仙の芽の小刀のごとく出で

夕暮に古巣の黒く浮びたる

手の届くほどに傾ぎて枇杷たわわ

 

 なお、美紀さんは10月14日に結婚披露宴を開かれたとのこと。大変おめでとうございます。準備などでご多忙であろうということで、インタビューは割愛した。替りにお祝いの一句を、お目汚し失礼。

 

 この上もなき美しき葡萄かな 祐之

 

(杉原 祐之記)

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