第六巻のはじめに(2012年8月号)    

第六巻のはじめに                  本井英

 

 「夏潮」第六巻第一号、八月号をお届けします。

  創刊から五年が経過し、私たちは俳句雑誌「夏潮」六十冊を世に送り出したことになります。まだまだ幼い歩みですが共に手を携えて歩き続けようではありませんか。

  ところで昨年の三月十一日、造化から我々にもたらされた「もの」の重さを、私たちは未だ正確に測れてはいません。百年後、二百年後、その「もの」の実像が幾らか明らかになる頃、今、この文章を読んでいる私たちは誰も生きてはいません。せめて子孫たちが三月十一日以降の、先祖(私たち)の対応の悪さを恨むことになりませんよう、今を一生懸命努力したいものです。

  考えてみれば私たちは七十年前にも、違った意味で、大きなでき事に遭遇し甚大な被害を被りました。あの「でき事」の詳細が、時とともに明らかになるにしたがって、その前後の先輩たちの対応に、若干の疑問を抱いているのもまた事実です。

  そんな中でも、私たちの国土は美しく四季を迎えています。山川草木、鳥獣虫魚は私たちを取り囲んで、私たちの心を「優しく」してくれています。将来の日本は「こうあるべきだ」、「こうありたい」と、一人一人異なる理想を心に抱いている私たちですが、この美しい「国土」を愛するという点では完全に一致しているといえましょう。

  私たちの「花鳥諷詠」は、そこにこそ大いなる意味を見出すものです。季題の一つ一つに尊敬の念を抱き、あるいは友情のような親しさを感じて、それらを五七五に「言い止める」こと。季題が私たちの心の奥底の、私たち自身すら日頃意識しない「声」を誘い出してくれると信ずること。他人との「違い」を衒うのではなく、「類似」にこそ喜びを見出すこと。

  今年もまた「夏潮 虚子研究号」を刊行することができ、「第零句集シリーズ」も第二期を迎えることができます。夏潮会員の皆さんの応援に深甚の謝意を表します。

 

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