花鳥諷詠心得帖16 二、ことばの約束 -8- 「仮名遣いの話(長音)」

原則第二類、第二項。エ列長音は、エ列のかなに「え」をつけて書く。  
これはもともとの字音表記もそうだったので問題は少ない。

第三項。オ列長音は「おう」「こう」「そう」「とう」のように、オ列のかなに「う」をつけて書くことを本則とする。
(例)王子→おうじ。扇→おうぎ。買う→かおう。
〔備考〕「多い」「大きい」「氷る」「通る」「遠い」などは「おおい」「おおきい」「こおる」「とおる」「とおい」
と書き「おうい」「おうきい」「こうる」「とうる」「とうい」とは書かない。

前回同様長音の問題になる。
同じオ列長音でも単語によって「う」と書いたり「お」と書いたりするのだ。
種明かしをすれば歴史的仮名遣いで「ほ」「を」と表記していたものは「お」となるのだが、
そんな区別はなかなかつくものではない。

例えば次の短文を仮名書きしてみていただきたい。
王子と狼が大きい氷を雑巾で覆って扇であおぎながら大阪から逢坂山の峠を通って
遠い近江にやって来た。
答は、「おうじとおおかみが、おおきいこおりをぞうきんでおおって、おうぎであおぎながら、
おおさかからおうさかやまのとうげをとおって、とおいおうみにやってきた」

如何だったろう、何の苦も無く出来た方は「現代かなづかい」が完全に身についている方。
筆者は自信が無い。
つまり普段は漢字で書いているから破綻をきたしてないだけで、
そうでなければ「大阪」と「逢坂山」なんて間違えてばかりの筈。

原則第三類。ウ列拗音の長音は「きゅう」「しゅう」「ちゅう「にゅう」のように
ウ列拗音のかなに「う」をつけて書く。
(例)大きう→おおきゅう。給与→きゅうよ。

原則第四類。オ列拗音の長音は「きょう」「しょう」「ちょう」「にょう」のようにオ列拗音のかなに
「う」をつけて書くことを本則とする。
(例)東京→とうきょう。今日→きょう。
〔注意〕 1,「クヮ・カ」「グヮ・ガ」および「ヂ・ジ」「ヅ・ズ」を言い分けている地方にこれを
書き分けてもさしつかえない。
2,拗音をあらわす「や」「ゆ」「よ」は、なるべく右下に小さく書く(縦書きの場
合)
3,促音をあらわす「つ」は、なるべく右下に小さく書く(縦書きの場合)
これら〔注意〕の解説は次回で。 (つづく)