『スピカ』第1号_(杉原)

『スピカ』第1号

 

「スピカ」第1号

当コーナーでも何回か紹介させていただいている、インターネットサイト「spica」。その紙媒体としての雑誌が「スピカ」創刊号が発刊されました。「spica」は神野紗希、江渡華子、野口る理が3人で創刊、「俳句を読む」をコンセプトに若手俳人が積極的に連載、座談会などを通じて発言しています。

今回は、インターネットのサイトから飛び出し、紙媒体の形でまとまりました。巻頭に3人の作品も載っていますが、鑑賞、批評を中心とした構成であり読み応えがあり、同年代の面々が色色俳句に対する熱い思いや、それぞれの俳論が述べられており、肯う得る点疑問に思う点が多々あり、勉強になります。

特集は「男性俳句」。「ホトトギス」で虚子が設けた「台所俳句」なる発表欄に端を発してカテゴライズされてきた「女性俳句」と相対する存在として「男性俳句」について考えるというもので、「スピカ」の3名と男性俳人3名の座談会及び、女性俳人2名のそれが開かれていました。更にそれに加え若手の論者が執筆をしています。

ここら辺りの話題の設定の仕方は「さすが」と思わされます。テーマの設定から読者を引き込んでいく手法は非常に優れています。

今回の「男性俳句」(及びその対となる「女性俳句)に関する結論は、それぞれの生き様や感じ方など自由奔放に話が飛んでいき、論の方向性についてはっきりしなかったのが残念でした。

かなり近しい面々が賑やかに行う座談は、「spica」のネットサイトでも大変興味深いコンテンツですが、その接し方のまま紙媒体の「雑誌」上に出てくると、「緩く」感じられてしまうということがあると思います。

 

また、ネットサイトで連載されていたコンテンツの一部が雑誌でも紹介されており、こちらもネットの画面で読んでいたのと比べ、頭の入り方が妙に異なる点が分り面白かったです。

何れにせよ、我々の世代の俳人が一体どのようなことを考えているか、俯瞰するのに丁度良い一冊であるといえます。定価は500円、「spica」のHPから注文できます。

 

巻頭に置かれた3人の句から2句ずつ紹介します。

●江渡華子「けふもまた」

 よけられてパセリゆつくり渇きゆく

 暑中見舞たまりし女子寮のポスト

●神野紗希「先へ先へ」

 校舎光るプールに落ちてゆくときに

 蓮見舟ひとの記憶をゆくときに

●野口る理「みづいろ」

 黄のダリア髪結ふためのゴム咥へ

 見下してみづいろ多き避暑地かな

 

<spicaホームページ>

http://spica819.main.jp/spicabooks/spicabooks-vol1

『スピカ』第1号_(杉原)」への2件のフィードバック

  1. 海音
    わたしも上記の「スピカ」購入しました。私のブログでの選と杉原さまの選と重なって嬉しいです。
    返信
  2. 祐之 投稿作成者
    海音さん コメント有難うございます。 海音さんも一層のこと夏潮に入会なさいませんか。色色原稿が待っております。
    返信

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