磯田和子『花火』鑑賞 (稲垣秀俊)

第零句集2号は磯田和子さん。和子さんの略歴は、杉原祐之さんの鑑賞文と重複するので割愛し、早速句の話に移る。

氷水そっと匙引くこぼさぬやう

季題は「氷水」、かき氷である。露店などで購入すると、コップ形の容器に山盛り入っているため、はじめの一匙には神経を尖らせることになる。大雑把な人であれば全く問題にしない景だが、ここにスポットライトを当てるところに、作者の繊細さを感じる。

磯田さんの繊細な心を窺える句として、さらに次の2句を挙げる。

秋繭の籠れる部屋の薄明り

松虫草人に会ひたる心地して

 本句集のタイトルは『花火』であり、掲載句のなかでこれを季題に用いたものは3句あるが、ここでは次の句を取りあげる。

続けざま揚がりて終ひ花火なる

「終ひ花火」という名詞化には賛否両論ありそうだが、花火大会の一際華やかなフィナーレを捉えた明朗な句だと思う。

 他に10句を選び、以下に記す。

穴まどひ見しと父にも怖きもの

成人の日の立山と対峙せる

大作をかけ終へ蜘蛛の休むかな

運ばれて来ては囃され夏料理

薔薇の芽に棘に濃き赤通ひけり

青といふ色のひときは熱帯魚

残る雪一塊の行き止まり

朝霧の退きつつ雨は本降りに

十薬の花に明るき杉木立

パンジー植ゑ準備完了花時計

 

(稲垣秀俊 記)

2 comments to 磯田和子『花火』鑑賞 (稲垣秀俊)

  • 当HPでは色色な方に原稿を書いてもらおうと思います。 今回は稲垣さんに書いて頂きました。 我こそはと言う方は、大募集しておきます。「ただ原稿を沢山書け」とは、本井先生の教えてでもあります。
  • taizo
    鑑賞文、楽しく読ませていただきました。 ただ一点。 「続けざま上がりて終ひ花火なる」に関する鑑賞なのですが、「終ひ花火」という名詞化ではなく、「終ひ」で一旦切れる。つまり、「続けざまに上がって終わてしまった花火であったことよ。」と解釈できるのでは?

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