コンバインのライトが帰る刈田道   磯田和子

 季題は「刈田」。「コンバイン」は本来「複合」の謂いであるが、ある時期から日本では稲の「刈り取り」と「脱穀」を一台でこなすトラクター形農機具のことを指すようになっている。したがって筆者としては「コンバイン」だけで充分秋の季題たりうるものと認識しているが、掲出句のように従前からある「刈田」をいう季題のもとで詠むというのも、言葉の過渡期にはあっては然るべき手立てであろう。

 一日中、朝から働きづめの「コンバイン」。勿論作業に携わっている農民も疲れていることだろう。しかし、天候の状態などを勘案すれば、今日は日が暮れるまで野良で働かざるを得なかったのであろう。真っ暗な農道をゆっくり下っていく「コンバイン」の「ライト」。その仄暗い光りの中に、疲れと安堵が見える。(本井 英)

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