はれがまし 本井英
消火器の赤のきはだち庵の冬 ぎくしやくと融雪栓の噴きはじむ 鰤待ちて沖にしづかに定置網 菰巻に顔を寄すれば香りけり 明るさや時雨やどりの池ほとり小諸・富山 三句
櫨の実のわつさわつさと生りきそひ 花八手菌糸のごとくたくましく 海苔篊をすり抜けてくる風ぬるし 小ぶりなる防災倉庫島の冬 泉水にやつて来てをり都鳥
ワイパーが拭へば次の霙かな 水仙や腓の日ざし楽しさに 顔見世や舞妓まじりにはれがまし 顔見世の役者が朝の食堂に ボロ市の真只中に住まひせる
混ぜ垣やまぬかれがたく茶は花を 掃き寄すや銀杏黄葉の粉々も 充電のごとく冬日に身をさらし ひとり来て心はなやぎ冬紅葉 柚子三つ惑星のごと湯にうかび