主宰近詠(2018年6月号) « 夏 潮

主宰近詠(2018年6月号)

要塞島     本井英

夜桜のひとゆらぎしてをさまりぬ

根治とは信ずることば花の下

旧上巳冷たき雨の止まぬまま

岬めざす車窓に雨の遅桜

ふる雨に木香薔薇の黄やはらか




タグボート溜まりへ春の雨つめた

野鳩せはしく鶯はのびやかに

鶯の近さや姿見まくほり

我が離れば鶯は嚠喨と

鶯の声やトンネル抜くる間も




砲座跡青木の花はみなこぼれ

島に生ひ島の地獄の釜の蓋

要塞の歩廊ちらちら藤散れる

岬風が空へ放つはつばくらめ

反転の燕すばやく翼閉ぢ




鵜の頚の鉤がつき出し春の潮

干潟より要塞島の崖仰ぐ

春濤へぶちかましては渡船来る

島うらら恙のことも少し聞き

チューリップ一弁垂れて蕊まる見え

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