主宰近詠(2018年4月号)

心経唱へ   本井英

ありたけの庭の水仙妻の墓に

風花や志賀の都と名は残り

絵画館の坊主頭に冬日ざし

背に浴びる冬日が味方闘病す

アスファルト濡れてまつ黒雪さらに




病室の鏡にぞ雪降りしきる

雪片や綿のやうなるなも混じり

降る雪はヒマラヤ杉を染めはじむ

降りくらむ雪に一灯また一灯

真夜は雪止み一颯の風も無き



    
I氏より
晩白柚の持ち重りせる志 今日干したばかりの大根ま輝き 岬山の眠れば浦曲まどろめる なまこ舟戻るとなればそそくさと 干潮に引かれし水脈の消ゆるまで




冬ざれてアロエもしどけなく撓み

獅子舞がロビーで舞ふも出湯の興

獅子舞の足袋の白さもはしけやし

目白らに遅れまじりて寒雀

著膨れて心経唱へくれをると
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