柿もいでくれもする 本井 英
山梨の滓口中にほの甘し 水仙の芽だち袴も行儀よく 鶺鴒や追ひ越しさうに追ひすがり 秋風に鷺の綿羽吹かれどほし河の秋輪中浮かびし世々のこと木曽三川
桑名城戦はず開きたる城曼珠沙華 菊人形の手摺のにはか造りなる 菊人形の草摺ことに華やかに 灯を消せば菊人形の香ぞ満つる 老木にいたはしきまで新松子
胴の間に積む蛸壺に秋の雨 秋雨にA旗掲げて浮かびをり「A旗」は潜水中の意の信号旗ソウル清涼里尼寺の尼柿もいでくれもする
慶州いかのぼりを野分の空に放ちたる 山雀や一旦藪へ消えてまた 山雀の頰つぺたの薄汚れたる 初鴨のすべなく降られをるばかり
主宰近詠(2018年1月号)
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