口うるささよ 本井英
叔母ひとり手狭まに暮らす残暑かな 新松子まつぼつくりも脇になほ 自転車の胸から上が蘆原を 沼風のおよびてはをり夏蕨 雀蜂に喰はれて蝶は翅四枚
秋鯖の腹のほのかに黄をおびし あをあをと紡錘のかたちに烏瓜 秋灯にあからさまなり御前立ち 鮒用の道具ですがと鯊を釣る 眺望や島崖は枸杞咲きさかり
女郎蜘蛛肥えてゆく日々空碧し 寺女の口うるささよ萩に雨 浜にはや佇む影は月の友 赤蜻蛉簗場の空の広からず 丘空に湧いて運動会の楽
裾風に雁金草の浮き上がり 林中の説明板の蛇拙な 蒲の穂の肉むらだてるあたりかな 稲架の影稲架を外れてありにけり 風のよく通へる落穂拾かな
主宰近詠(2017年12月号)
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