主宰近詠(2017年7月号)

芭蕉林   本井 英

蕗原を雨が鞣して青の色

城垣のたるむあたりの花菫

あたたかや網を繕ふ右手に杼

花の雨焼き場に向かふバスも着き

亀鳴くや夜舟のありしころのこと




コンビニが出来しころより亀鳴かぬ

春の蠅翅ほつそりとをりにけり

画眉鳥の囀いよいよ華語めくよ

雨風に古巣の腰の抜けはじめ

ふりたてて短く勁く蜷の髯




つかの間を春潮に置き箱眼鏡

芭蕉林かな径出あひ水出あひ

芭蕉玉巻く肩ぽんと叩きたく

芭蕉林抜け黄菖蒲をはるかにす

雲雀落ちはじめて白つぽく見ゆる




落ちそめて雲雀大きくながれけり

村うらら五百余柱殉国碑

若蘆や手旗のやうに葉をかまへ

黄色から始まつてをり蛇苺

深川に行幸啓碑昭和の日