ふと夫のゐる気配あり初鏡   根岸美紀子

 季題は「初鏡」、元旦に見る鏡である。「夫のゐる気配」というのであるから、夫は本来は「いない」存在ということであろう。元旦になって「初鏡」に向かう作者。どこか近くに、いるはずのない「夫」の気配を感じたというのである。「初鏡」と女性心理がしっかり詠まれている。

 句評というものは、作者の実生活に立ち入ってはいけないのが原則であるが、この句の場合、筆者には、その「夫」の風貌まで目に見えてきてしまって、言葉に詰まってしまう。たとえば筆者のように大きな声を出して、家中をどしどし歩いているような「がさつな男」の場合は、「気配」などという微妙なものはなく、細君からすれば、やや鬱陶しい位であるが、一方、作者の「ご夫君」は確かに、いつの間にか、ふっと近くに佇んでいるような、静かな人物であった。あらためてご冥福を祈る次第である。作者の亡き夫君への「愛」がしみじみと伝わってくる。 (本井 英)

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