主宰近詠(2017年4月号)


右横書き   本井 英

初富士へ金烏傾きそめんとす

双六の折れ目に駒のころげけり

迎春と右横書きを掲げたる

なまはげの今年雪無き道を来る

なまはげの帰りゆくとき小さかりし




坊ごとに今日のお届け凍豆腐

寒椿落ちて氷にころがれる

ゆつくりとぶつかることも寒の鯉

釣りよせて少し抗ひ寒の鯉

寒鯉のふかく湛へしインク色




川風にことさら寒しふくらはぎ

海猫とならべば華奢に都鳥

寒天に消防ホース吊るし干し

川涸れて取水ホースの横たはり

探梅に熊鈴もがな径細り




尉鶲枝つかむとき裳裾派手

大屋根の寒の乾きの蕪懸魚(カブラゲギヨ)

日脚伸ぶ聖夜の星がまだ窓に

列柱の南都銀行日脚伸ぶ

陽石に紙垂めぐらせばあたたかし