主宰近詠(2017年3月号)


ほんわりと  本井 英

頸上下してゐし鴨の交りたる

見知りをれど名は知らぬなり日向ぼこ

御首級(ミシルシ)を埋めてまつる枯木山

山靴の泥をぬぐふに冬の草

旭光に霧氷ささやきそめにけり




蕎麦搔や十一宿は山の中

蕎麦搔に外湯めぐりの一休み

蕎麦搔や逃散などと物騒な

助炭白二畳台目(ニジヨウダイメ)のよろしさに

消閑にこころ尽くせば枇杷の花




冬帽子熊の耳つけ兎の耳つけ

しかすがに萎れ皇帝ダリアたり

乾ききりし銀杏黄葉や踏めば音

宝くじ売場著膨れならぬなく

著ぶくれてフラ教室の更衣室




著ぶくれて手庇をして老いけらし

遠目にはほんわりとあり花八手

島裏の畑も枯野にもどりたる

日のベンチ冬至の蠅が待つてゐし

大枯木かな皮めくれ枝よぢれ