大くさめ 本井 英
とんばうやダム湖へ下る道は急 山襞を奥へ折れ込み湖の秋 破芭蕉新地に「やよい」のみ残り 青々と千両の実の少年期 十三夜近づく月の鎌青し
稲の香に充たされてをる出湯の闇 滑莧の茎の紅さも山のもの 山かたち闇に溶けたり濁酒 濁酒蒲柳の身たあ笑はせる 鬱然と真夜の山なみ鰻落つ
国名の変はりてさらに鰻落つ枯れきりて立つ竜胆の矜恃かな ひらひらと鮠くねくねと岩魚たり 虎杖の茎枝黒く枯れわたり 霜すこし置いて虎杖素つぱだか志賀高原稽古会 八句
ゲレンデの緩急どこも雪を待ち 蒟蒻の黄ばみちぢれてまだ掘らぬ 錦秋の山へ投げたり大くさめ 金剛の幾億粒へ霜ほどけ 団塊の世代の君ら小鳥撮る
主宰近詠(2017年1月号)
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