山雀舎 本井 英八寸や今宵雨月とさだまりて 句碑あれば訪ぬる一寺葛の花 執念くもまとはる秋蚊討ち果たす 子規庵に冷房がよく効いてゐし 霧の蓋かぶせたるまま河曲がる
延着を迎へに出づる夜霧かな 磯原を海原を霧雨おおふ 一位の実妣に逢ひたしとは誰も 早紅葉とも汐傷みとも丘襖 磯原にまぎれ込んだる穴まどひ
裏ありく蟻見えてをる黄蜀葵 井桁石を均しくあふれ水の秋 秋水に丹のあからさま弁財天 山雀舎訪ふ山雀のをりにけり 地へ還る蚯蚓の仔細見届けし
どれの木のどの枝となく薄紅葉 天牛の宙をゆく立ち姿かな 夏帽をキャッチャー被り子孫なく 秋雨や納屋に毎日よその猫 蛇坂のつき当たりたる葛の丘