旅愁とよびて 本井 英
豹紋のパンプス青き踏みて立つおもちや箱開いたやうに囀れる 教はりてうはみず桜ほわつと白 雉の夫茶藪をぬけて梨棚へ さきほどの雉なるべし遠く啼く富山稽古会 十六句
二声目嗄れて雉の夫あはれ 雉の夫間遠に啼いて風の村 啼くほかは日がな一日雉の夫 雉聴くや旅愁と呼びて可ならんか 伝ひゆく風の遅さに八重桜
新湊大橋蜃気楼日和 囀のからつからつと川原鶸 蒲公英やびぶらの爪を矯めなほし いつの間に丘の高きに蕨採り 蕨採る一日おきに同じ場所
つばくらの今朝の低さや膝掠め 若木には無理させずとよ梨花の棚 根にちかく菖蒲の花のつつましや さやりさやりと吾亦紅若葉これ 丁字草の紫人に阿ねざる