主宰近詠(2016年7月号)


旅愁とよびて  本井 英

豹紋のパンプス青き踏みて立つ

富山稽古会 十六句

おもちや箱開いたやうに囀れる 教はりてうはみず桜ほわつと白 雉の夫茶藪をぬけて梨棚へ さきほどの雉なるべし遠く啼く



 声目嗄れて雉の夫あはれ

雉の夫間遠に啼いて風の村

啼くほかは日がな一日雉の夫

雉聴くや旅愁と呼びて可ならんか

伝ひゆく風の遅さに八重桜



新湊大橋蜃気楼日和

囀のからつからつと川原鶸

蒲公英やびぶらの爪を矯めなほし

いつの間に丘の高きに蕨採り

蕨採る一日おきに同じ場所



つばくらの今朝の低さや膝掠め

若木には無理させずとよ梨花の棚

根にちかく菖蒲の花のつつましや

さやりさやりと吾亦紅若葉これ

丁字草の紫人に阿ねざる