襲はれし如くに 本井 英 迎春と左横書き宮の春 坪庭や福藁の香の充ちわたり 福藁や女将は父を知れるひと いつの頃よりか姉にもお年玉 病める身を励まし寒に入らんとす 寒林を明るく載せて中洲かな 寒梅にぱちつと雨の当たるとき 前栽の茶畝に寒の雨やまず 涸池に降り込む雨のあからさま 冬の雨つひに欅の幹伝ひ
提灯の尻揺れやまず桜鍋 氷上に水の溜まりて景映す 声かはすなく寒林にすれちがひ 水鳥の水尾のめらめら〳〵す くづほれて褞袍のやうや枯葎 襲はれし如くに蒲の穂綿散る 身中にひそむ病魔も春を待つ 氷解けて池面ささやきそめにけり 丈とてもなく魁の犬ふぐり 落椿滑川へと水奔り