雑詠(2018年5月号)

この雪の下の景色を忘れたり		国分今日古
元日の雨の中なる日章旗
靴で耳つけてトトロの雪だるま
凍道に探れる足の置き所

葉痕に猿面冠者春隣			柳沢木菟
うす闇を得て十薬のここだ咲く		櫻井茂之
桐の花落ちて小さく弾みけり		山口照男
探梅行墓場の裏に出てをりぬ		馬場紘二

雑詠(2018年4月号)

流線の左旋右転ぞ吹雪なる		稲垣秀俊
鍬深く打込みけふの葱を掘る
海へ海へ地吹雪の波連綿と
虎落笛コーヒー苦き仮事務所
打橋や弁天島の年用意		小野こゆき
朝寒の仕事場にまづ灯をともす		山本道子
雨もさりながら喪にある寒さかな	岩本桂子
注連飾買うて渡船の列にあり		田中 香

雑詠(2018年3月号)

蓮刈られ鉢に短かき茎の数			山内裕子
安全旗風に勤労感謝の日
移りつつ日矢をこぼして冬の雲
冬木の芽上を向かんとしてをりぬ

巣穴から少し歩いて蜂飛べる		櫻井茂之
種を採るおさるの貌にさも似たる	三上朋子
自動ドア抜けて落葉の香の中へ		前田なな
著膨れて所作揺るぎなく橋普請		稲垣秀俊

雑詠(2018年2月号)

滝水のぐうんと伸びて落ちにけり		山本道子
滝水の伸びて崩れて滝壺へ
朝露を載せて生姜の葉の匂ふ
自然薯(ヤマイモ)の蔓と巻き合ひ灸花

残る蚊に刺されて夜半を目覚めをり	町田 良
秋蝶の袂をひとつ失へる		田中 香
行秋を灯して雨の競馬場		冨田いづみ
今朝の秋わたしスキップしたりして	井出保子

雑詠(2018年1月号)

駅過ぎて遠花火また見ゆるかな	田中 香
初秋や耳納の襞の黒々と
路地裏に昼のカラオケ鳳仙花
秋蝶の身の置き処なく飛べる

蜘蛛の囲をぶわんと撓め秋の風		浅野幸枝
下り簗魚影の見えてゐて落ちぬ		磯田和子
秋雲や野中到の墓処			児玉和子
県知事の挨拶のある里祭		西木麻里子