雑詠 « 夏 潮

雑詠(2018年3月号)

蓮刈られ鉢に短かき茎の数			山内裕子
安全旗風に勤労感謝の日
移りつつ日矢をこぼして冬の雲
冬木の芽上を向かんとしてをりぬ

巣穴から少し歩いて蜂飛べる		櫻井茂之
種を採るおさるの貌にさも似たる	三上朋子
自動ドア抜けて落葉の香の中へ		前田なな
著膨れて所作揺るぎなく橋普請		稲垣秀俊

雑詠(2018年2月号)

滝水のぐうんと伸びて落ちにけり		山本道子
滝水の伸びて崩れて滝壺へ
朝露を載せて生姜の葉の匂ふ
自然薯(ヤマイモ)の蔓と巻き合ひ灸花

残る蚊に刺されて夜半を目覚めをり	町田 良
秋蝶の袂をひとつ失へる		田中 香
行秋を灯して雨の競馬場		冨田いづみ
今朝の秋わたしスキップしたりして	井出保子

雑詠(2018年1月号)

駅過ぎて遠花火また見ゆるかな	田中 香
初秋や耳納の襞の黒々と
路地裏に昼のカラオケ鳳仙花
秋蝶の身の置き処なく飛べる

蜘蛛の囲をぶわんと撓め秋の風		浅野幸枝
下り簗魚影の見えてゐて落ちぬ		磯田和子
秋雲や野中到の墓処			児玉和子
県知事の挨拶のある里祭		西木麻里子

雑詠(2017年12月号)

ででむしをつまみ地球と切り離す		磯田知己
形代に老若男女表裏無く
歩行者用ボタンを押して片陰へ
空蟬の中は随分窮屈さう

浜木綿の明日咲く蕾への字なる		早稲田園子
白鍵に沈める指や夜の秋		田中 香
垣根なき海辺の暮らしカンナ赤		小川美津子
かもめ現る夜涼の船の灯の中に		津田祥子

雑詠(2017年11月号)

光から雷鳴までを息つめて			木下典子
初蟬の聞こえ洗濯日和かな
紫陽花に木の影おとし一里塚
風鈴をいくつも下げて陶器市

退院や一日遅い鰻の日		矢沢六平
鉛筆で蟻のけんかを仲裁す		小野こゆき
冷麦へ氷ごろごろ落とし込む		山内裕子
あめんばう出合ひ頭の横つ跳び		河内玲子